ゲーム市場向けのニッチなグラフィックボードからスタートしたエヌビディア。

現在では高性能ゲーム向けを軸に、クラウドのデータセンターやプロフェッショナル向けの画像処理、AIや自動運転向けまで領域を拡大し、いまや世界の時価総額トップ10にランクインするまでに成長してきました。

純利益2.2倍増と急拡大

エヌビディアは2月16日、2021年11月~22年1月期の四半期決算と、2022年1月通期決算を発表しました。概要は以下の通りです。

通期(年間)ベースでみてみましょう。

売上高は前年比61.4%増の269億1400万ドルで、100億ドル以上も増えました。

新型コロナによる需要増も追い風となり、主力のゲーム向けGPUやゲームプラットフォーム用のソリューションを中心とした画像処理関連の製品やサービスが含まれる「グラフィックス」セグメントがデータセンター用のプラッタフォームや関連システム、人工知能(AI)関連、自動運転関連などが含まれる「コンピューティング&ネットワーキング」セグメント。

対する支出も、売上高の増加に伴い売上原価が50.3%増えたほか、従業員の増加に伴う報酬やインフラ関連費用などが増えたことから、研究開発費は34.3%増、販管費は11.6%増とそれぞれ増加しました。ただ、売上高の伸びが大きく、これらのコスト増を軽く吸収した格好です。

この結果、営業利益は前年比2.21倍(121.6%増)の100億4100万ドルと初めて100億ドルを突破。純利益も前年比2.25倍(125.1%増)の97億5100万㌦と大幅な増益となり、史上最高益を大きく更新しました。

(出所)決算発表資料より筆者作成

データセンター向けが2本目の柱に成長

エヌビディアは市場カテゴリー別のデータを公表していますので、みてみましょう。

市場カテゴリーは、次の5つに分類されています。

・Gaming

・Professional Visualization

・Data Center

・Automotive

・OEM & Other

まず、一番大きなカテゴリーである「Gaming」は、PCゲーム向けのグラフィック半導体「GeForce GPU」、ゲームおよびストリーミング向けのSHIELDデバイス、専用ゲーム機向けのプラットフォームや開発サービスのほか、2020年にスタートした「GeForce NOW」と呼ばれるクラウドゲームサービスが含まれます。

このカテゴリーの売上高は、新製品も加わり年間を通して好調を維持した結果、前年比60.6%増加しました。

「Professional Visualization」は、映画や放送などの映像関連のほか、コンピュータの設計、建築、医療機器、航空宇宙などの分野におけるVR(バーチャル・リアリティ)向けなどの製品が含まれます。クリエーターやアーティスト向けのAmpereアーキテクチャ製品が好調で、このカテゴリーの売上高は、前年比100.5%増と倍増しました。

「Data Center」は、クラウドコンピュータやデータセンター向けのプラットフォーム、ディープラーニングや機械学習といったAI(人工知能)向けのソリューションがこのカテゴリーになります。引き続き旺盛な需要に支えられ、売上高は前年比58.5%増加の106億ドルとなり、「Gaming」に次ぐ2本目の柱に成長しています。

Automotive」は、車載インフォテインメント(AVやナビシステム)や自動運転用プラットフォームなど自動車関連の市場です。他のカテゴリーと比べると、売り上げ規模はそれほど大きくはありません。売上高は、自動運転関連は増えたものの、自動車メーカーのサプライチェーン混乱の影響で車載インフォテインメントが苦戦したことから、前年比5.6%の伸びにとどまりました。

「OEM & Other」カテゴリーの売上高は、前年比84.2%増となりました。暗号通貨マイニングプロセッサー(CMP)が増えたことが要因です。

(出所)決算発表資料より筆者作成

アーム買収を断念

2月7日、エヌビディアとソフトバンクグループは、エヌビディアのアーム・リミテッド買収を断念することを発表しました。

両社は、2020年9月にソフトバンクグループ傘下のアーム・リミテッド(アーム)を400億ドルで買収することで合意し、その準備を進めていました。ただ、競合メーカーからの反発が相次いだほか、英国政府が市場競争や安全保障の観点から調査を拡大し、米連邦取引委員会(FTC)も買収計画の差し止めを求める訴訟を起こしていました。

発表のリリースでも、買収を断念した理由として、「significant regulatory challenges」(規制上の重大な課題)が取引の完了を妨げているため、と明記しています。

もっとも、アーム買収がなくなっても、エヌビディアの今後の事業には大きな影響はないとみるアナリストの意見もあります。

エヌビディアが発表した2022年2~4月期の売上高見通しは81億㌦±2%で、これは前年同期比40~46%増という水準です。引き続き、高い成長を見込んでいるとみてよさそうです。

最近話題となっているメタバースの分野でも、エヌビディアは有力企業の筆頭にあげられています。今後も同社の動きから目が離せません。

(出所)証券取引所(NASDAQ)データより筆者作成

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この記事を書いた人

加藤千明

1969年生まれ、福井県出身。
大手国内証券会社を経て、東洋経済新報社入社。
マクロ経済・金融部門を中心に、業界担当(エレクトロニクス・化学)、投資信託評価、地域経済、米国企業分析などの業務に従事。
2021年2月に独立。ファイナンシャルプランナー。プライマリー・プライベートバンカー。
幸せマネーライフの水先案内人-FPオフィスウィズ― 代表
決算情報をベースに、IPO、M&Aなど、米国株投資に役立つ、「気になる」「知りたい」米国企業の最新情報を発信するアメリカ企業リサーチラボを運営。