15業種22年度の見通し

今回は22年の業界ごとの見通しとコメントとをお伝えさせていただきます。ぜひ超富裕層の方々にはトレンドの先読みをしていただきたいと思います。

1.情報通信・サービス他

情報通信業は、携帯電話企業がセクターの中心であることを考えれば、携帯価格改定による減収懸念は後退し、特に、NTT(9432)は今後の事業再編によるシナジー効果はアップサイド材料と見ています。

2.エネルギー資源

資源バブルは、22年中頃までは継続する見通しです。その後、価格が落ち着く兆しが出た段階で関連銘柄の値動きも一旦落ち着く可能性が高いと思います。長期的には「脱炭素」シフトで化石燃料の使用は減らす方向性ですが、むしろその動きが足元の資源価格を上昇させている、高くても買い手がいる状況という矛盾を生み出しています。その状態がどこまで続くのか、綱引き相場です。

3.電機・精密

22年は5Gの本格化や自動車向けの回復で需要の拡大傾向は続き堅調な見通しです。

4.機械

中国市場の減速が懸念される中、オークマ(6103)と牧野フライス(6135)の株価は冴えない展開です。しかし、決算は好調であること、かつ中国受注は懸念されるほど悪化していない点と欧米市場で幅広い産業に見られる設備投資需要を鑑み、ダウンサイドリンクは限定的だと見ています。22年はEV需要が本格化することを踏まえてアップサイドに期待しています。

5.小売

ダメージの大きい小売りは22年はコロナからの回復の年になるでしょう。厳しい冬の時代に徹底したコスト削減、ITの導入など時代の要請に応え、筋肉質な財務体質に変貌を遂げた企業の復活に注目です。

6.素材・化学

脱炭素で注目の業界です。日本の化学企業は研究開発に人員を手厚くし、ここまで種まきを続けてきており、東レ(3402)や旭化成(3407)などの脱炭素に貢献できる優れた技術を持つ企業に注目しています。

7.自動車・輸送機

日本車各社は11月以降の挽回生産の度合いを強めています。トヨタグループに人材派遣を行うシェアトップ企業への取材を通しても「過去にないレベル」の逼迫状況を見込んで人材供給の準備を既に整えたと話しています。半導体不足など不透明用意は多いものの、22年は生産回復が期待されます。

8.鉄鋼・非鉄

鉄鋼生産の6割弱を占める中国の動向を常に睨みながらとなります。日本製鉄(5401)やJFE(5411)は赤字から黒字浮上ですが、長期的には脱炭素シフトでCO2を排出する鉄鋼メーカーには圧力です。

9.食品

食品業界は巣篭り需要が一巡。経済再開に伴って、業務用の需要が回復する見通しです。しかし、コロナ以前から課題であった国内市場の成熟に伴い中食の掘り起こし、海外進出、M&Aといった戦略は引き続き必要であり、この辺りの戦略を打ち出せた企業が勝ち組になるでしょう。

10.建設・資材

ゼネコンはキャッシュリッチ企業が多く、株主還元として高配当になりやすいです。西松建設(1820)を代表にアクティビストの存在感が高まる業界です。増配、自社株買い、社外取締役の人数増加など外的圧力がかかり、ROEも高い企業が多く再評価もされています。

11.運輸・物流

ヤマトHD(9064)、SGホールディングス(9143)ともに業績好調。引き続きEC需要の成長が期待されますが、株価は巣篭り特需剝落と見なし、売られる局面もあるでしょう。しかし、堅調な業界であることに変わりはないと見ています。

12.商社・卸売

資源に依存したビジネスモデルから、資源高の追い風を受け、好決算・増配を発表する企業が多く配当狙いから底堅さを見込みます。一方で、課題は非資源分野の収益拡大と、脱炭素シフトへ事業展開が迫られている点は懸念材料です。

13.不動産

オフィスの空室率は21年末がピークと予想され、22年は徐々に回復の見通し。東京大学の研究レポートでも、コロナでも大都市から地方への人口流出は思っていたほど起きておらず、むしろ「大都市雇用経済」が拡大し都市の魅力が増したとの報告もあり、オフィス需要の底堅さを確認する年になるでしょう。

14.銀行

メガバンクと地銀では好不調が分かれる。メガバンクはアジア戦略に加えて、国内では他業界との提携が進んでいます。さらに、米10年債利回りの上昇を背景にゴールドマン・サックスやシティグループなどの米金融株高に追随する動きとなるでしょう。地銀は収益悪化で経営体力が低下している銀行同士の提携や経営統合もますます加速するでしょう。

15.電力・ガス

大手企業は脱炭素と安定供給の狭間に苦しむ。また、電力小売り自由化に伴う企業間の競争も新たな局面に入っています。これまで新電力は割安な料金を元に大手電力会社からシェアを奪ってきました。しかし、新電力の市場連動型プランではむしろ電気代が上昇する局面もあり成長の壁に直面しています。脱炭素の流れで構造展開が求められる厳しい業界です。

一覧にすると下記のようになると見ています。

図1第8回-超富裕層のための22年の見通し

ご参考にしてください。

この記事を書いた人

馬渕 磨理子

認定テクニカルアナリスト(CMTA®) 公共政策修士

京都大学公共政策大学院 修士過程を修了。法人の資産運用を自らトレーダーとして行う。その後、フィスコで、上場企業の社長インタビュー、財務分析を行う。全国各地で登壇、プレジデント、週刊SPA!、Yahoo!ファイナンス、ダイヤモンドZAI、日経CNBCなど多数メディア掲載・出演の実績を持つ。現在は、ベンチャー企業で未上場マーケットのアナリスト・マーケティングを担当。大学時代は、国際政治学を専攻し、ミス同志社を受賞している。

【連載等】
マネックス証券での連載、Yahooファイナンスの記事掲載、ラジオ日経の出演経験などがあり、『PRESIDENT』『週刊SPA!』『日経CNBC』『ダイヤモンドZAi』『Yahoo!ファイナンス』『週刊女性』『テレビCMマネックス証券』など多数のメディア出演